ページトップ
WEB予約
044-733-4618
WEB予約

BLOG

院長ブログ

金閣寺を焼かねばならぬ 4 最終稿

内海教授の著作の最終章は、教授の偏愛の対象ともいえる三島由紀夫に肉薄していく 実在の病者と三島が作り上げた分身と病跡学の手法をとり時には偏愛のため逸脱しながら。

私がこの本の題名を見て読みたかったのは想像上の生きる三島由紀夫と天才病理学者である教授との対話であったが残念ながらそうではなかった。

フランスには Un ete avec 著者 というシリーズがあって 例えば ヴァレリー プルースト パスカル などとの想像上の対話本が上梓されている。才能があり愛情がありおしゃれである。日本でもごくまれに見かけた記憶はあるが絶無ですね。

教授の偏愛の対象の著作は言うまでもなく 金閣寺 であり 鏡子の家 である。私はいろいろな作家の中で一番数をこなしたのは三島だとおもうが 全集がやすかったのでそれまでもっている 35000円 あとは1冊全集 伊東静雄 くらいかな しかし私にはこの二つの著作は読めないのだ 退屈で。

三島は稀代のストーリーテラー しかも悪漢ものの とおもっていて そこらの中編が好み

大上段に哲学とも観念とも感情ともいえる単語を羅列して独特の世界観 といってもかなりワンパターンなのだが

のような作品は面白くないし読み切れない 彼は中編で好評を得てからこうした大作に取り掛かりほとんど不評であった。それらはこれからも読むことはないだろう。

そうだな私の好きな作品といえば 絹と明察 音楽 三熊野詣 潮騒 天人五衰 あたりかな

三島の少年詩を読んでいると青年期からの難解な抽象語はなく具象性に満ちている 少年だから当たり前ともいえるが思春期が進むにつれそれでは済まなくなり詩の才能が明らかに未来がなくなり少しづつ観念的なものがはいりこんでくる そこらへんで彼は小説というストーリーを作るほうに転換している。その後の活躍は知るべしである。

三島の精神の分析においては 私の碩学の先輩は自己愛性人格障害の典型だねと述べていたのが印象的でありその後説明するのに使ってはいるが 実際の自己愛性人格はもっとレベルの低いものである。 三島は自己のみたところの冴えなさや文学の行き詰まりは正確に意識していたと思われる。内海教授は自己愛性という言葉は使わず慎重にナルシっスソスということばで表現されている。

できたら教授には三島との架空の対話や著作を網羅した文学評論を書いていただきたいが かなわぬ夢かな

私はたくさんの文学者、評論家の書いた三島論はあらかた読んでいるので新しいものはないかもしれない。

奥野健男のものが参考になったし猪瀬直樹については読む価値はないと思っている。

時間ができたらゆっくり全集を紐解いてみたいと思う。最後は平安の雰囲気をうまく漂わせた天人五衰あたりか

そういえば教授の脱稿は 2020年2月26日 令和憂国の日となっている よほど好きなのだと思う。

今日は2月24日 そういえば私も あと2日するとあの何十年か前の若い私に会える。