ADHDとパーソナリティ問題
ADHDの臨床をしていると特徴的なパーソナリティの方はいらっしゃいます。不安がつよい 現状にたいする不満(環境や自己)強迫的 無力的 うつ親和的 などが思い出しただけでもざっと上がってきます。なかには薬物依存傾向を形成しやすい方 反社会的傾向がみられる方も少ないですがいらっしゃいます。そのため投薬 特にコンサータの投与は慎重なことが要請されています。現実的には新患 増量は困難になっています。当然とも思われます。
どんなタイプのパーソナリティ障害があるか
DSM-5-TR における 10 の類型と 3 つの群
A 群(奇妙・奇矯な態度や思考を特徴とするタイプ)
- 妄想性パーソナリティ症(猜疑性パーソナリティ症)他者の行動や意図に対して過度な不信感や疑いを持つ。
- シゾイドパーソナリティ症他者との社会的関係への関心が薄く、感情表現が乏しい。
- 統合失調型パーソナリティ症奇妙な思考や行動、親密な関係における強い不快感や歪んだ認知を持つ。
B 群(感情的・劇的・自己中心的な態度を特徴とするタイプ)
- 反社会性パーソナリティ症他者の権利の軽視や侵害、社会的規範を守らない不法行為・欺瞞。
- 境界性パーソナリティ症(ボーダーラインパーソナリティ症)対人関係、自己像、感情の著しい不安定性と過度の衝動性。
- 演技性パーソナリティ症過度に感情的で、常に他者からの注目を集めようとする行動。
- 自己愛性パーソナリティ症誇大性(自己の能力や重要性の誇張)、賞賛されたい強い欲求、共感性の欠如。
C 群(不安・恐怖・内気さを特徴とするタイプ)
- 回避性パーソナリティ症批判や否認、拒絶への過剰な恐れから社会的接触を避ける。
- 依存性パーソナリティ症他者から世話をされたいという過剰な欲求があり、従属的・しがみつきの行動をとる。
- 強迫性パーソナリティ症秩序、完璧主義、精神および対人関係の統制(コントロール)に過度にとらわれる。
※このほか、「他の特定のパーソナリティ症」 および 「特定不能のパーソナリティ症」 も診断分類として存在します。
ではADHDやほかのパーソナリティ問題とおもわれる臨床においては どんな問題があるかといわれると
いろいろな特徴が混じている 診断は重み付けの重いものから診断されるという傾向です。
そこで わが国では 保険医療上の診断名としては WHOのICD10を準拠とした保険名が医師の付ける診断として法的根拠を持っています。
今回 ICD11では パーソナリティ障害について革命的ともいえる変換を行いました。
ICD-11 との違い(根本的な構造転換)
ICD-11(2019年総会採択、2022年発効)では、従来の「反社会性」「境界性」といった個別疾患名の大部分を廃止し、完全に新しいモデルへと移行しました。
1. 個別カテゴリー(病型)の廃止と重症度分類
ICD-11 では、「〜型パーソナリティ障害」という固有名詞による分類を行わず、まず機能障害の程度に応じた重症度(Severity)で診断します。
- 軽度(Mild)
- 中等度(Moderate)
- 重度(Severe)
※対人関係や社会的機能への支障度合によって段階評価されます。
2. ドメイン特性(Trait Domain)によるプロファイリング
重症度を定めた上で、患者の臨床像を5 つのドメイン特性の組み合わせとして記述します。
- 負の感情(Negative Affectivity):不安、抑うつ、感情不安定さなど
- 孤立・脱着(Detachment):社会的・感情的なひきこもり、親密さの回避
- 非社会性(Dissociality):共感性の欠如、利用・欺瞞、他者軽視
- 脱制止(Disinhibition):衝動性、無計画さ、危険行動
- 強迫性(Anankastia):過度な完璧主義、コントロール欲求、柔軟性の欠如
3. 「境界性(Borderline pattern)」指定子の残存
臨床現場での混乱を避ける実務上の配慮として、ICD-11 では唯一「境界性パターン(Borderline pattern)」のみをオプションの指定子(Qualifier)として残しています。
診断名をはじめから目標とするのではなく 機能障害の重症度と それらの中の要素の組み合わせを考えて状態増を浮かび上がらせるという手法です。
臨床医としては画期的に使いやすくなるという予感がいたします。
ADHDとパーソナリティ障害についてもこのような考え方でやっていくのが主流となるでしょう。
松島淳



